花組の公演、ミュージカル『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』の感想です。
作/演出は、生田大和先生です。
ピアノの魔術師と呼ばれたフランツ・リストの生涯がテーマです。
タイトルを見た時から、巡礼・・・彷徨・・・なんだか暗くて難しそうな作品かしら・・・と思っていました。
- 「巡礼」:日常的な生活空間を一時的に離れて、宗教の聖地や聖域に参詣し、聖なるものにより接近しようとする宗教的行動のこと(Wikipediaより)
- 「彷徨」:さまよう、歩き回る
リスト・フェレンツとは、自分の名前ですね。(地名のフィレンツェのことかと・・・)
自分の本質的なアイデンティティのことだそうです。
ピアノを極めたかに見え、名声も手に入れたリストが、それでいいのか?
と問いかけながら、自分の本質を求めてさまよいながら生きる様を描いた作品です。
リストは、母国語であるハンガリー語が話せなかったそうなので、
そのことも、「自分は何者なのか?」と問いかける一端になったのかもしれません。
ハンガリー出身でハンガリー語を話せないということは、
それほど珍しいことではなかったようです。
暗い作品かと思いましたが、柚香光様の圧倒的美しさ、
そして宮廷の華やかで豪華キラキラな場面もあり、
登場人物の衣装も華やかな物が多く、楽しめました。
ピアノをテーマにした作品だけあって、
ピアノが舞台の上のとても目立つところにありました。
リサイタルにも現代的なエッセンスが取り入れられていました。
物語の随所でピアノが登場するせいか、
よく舞台が上がったり下がったり回ったりしていた印象。
リストの恋人とされるマリーと、なぜ恋愛関係になったのか?
なぜ分かれることになったのか?が、展開が早すぎていまいち理解できず。
ジュネーブでの二人のラブラブなシーンは、
本当に純粋にリストとマリーのままの二人が向き合っている
ピュアな二人を、白い衣装で表していて、素敵でした。
それに対応するように、名声、名誉を求めるようになったリストが、
キンキラの服を着て、勲章をゴテゴテにつけた貴族の服も印象的。
煌びやかで、本人も望んでいた姿だけれど、
マリーの望む姿ではなく、二人はすれ違う・・・
衣装と言えば、ジョルジュサンドの衣装も心に残りました。
最初は、男装の麗人と呼ばれ、パンツスーツを好んで着ているが、
ショパンと二人で過ごす頃は、ドレスの女性らしい姿。
きっと、ショパンといる時は、心安らげ、一人の女性でいられたのでしょう。
パリのピアノ学校の生徒たちの描写が良かった。
ピアノを弾くところを、ダンスで表現しているのはうまい!と思いました。
(生徒たちの衣装が白いのは鍵盤をイメージ?)
フランツ・リスト(柚香光 ゆずかれい)
もうとにかく美しすぎて・・・金髪ロングヘアが似合いすぎでした。
サロンのご婦人たちが、彼が演奏する時に「キャー」と叫ぶのですが、
その気持ち分かる!と思わず言いたくなるような。
一緒に叫びたくなるようなイケメンリストでした。
冒頭のジョルジュサンドとのラブシーンも、
どこを切り取っても一枚の絵になるような完璧な美しさ。
最初の5分で、もうこの舞台大満足!と思えてしまうような美でした。
そしてなんと!舞台上でピアノの生弾き語り!ピアノがお上手でした。
もう柚香さん、どれだけすごいんですか?と思わされます。
苦悩や葛藤など、リストに共感できる部分があるとおっしゃっていたので、
このミュージカルを通して、
柚香さんの舞台に対する姿勢が表現されているのかもしれません。
アウグストゥスでも魅せた悩む役どころですが、
柚香さんリストのように
どこも完璧に見えるような、一見近寄り難い存在に見えるような人物が、
悩み、さまよう様子を演じることによって、
親近感を感じられました。
あと、プログラムでものすごいアクロバティックな体勢でピアノを弾かれていました。
超絶技巧ってそっち!?みたいな。
プログラムをぜひ見てみてください!
②に続きます。